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燦々とした太陽の陽が眩しい、正午を過ぎて少し経った頃。 私はいつも通り、家事や洗濯を一通り終え、まったりと 午後を過ごす準備をしていた・・はずだった。 「・・どうしようかな・・」 ふと呟いてしまった心の内の一言。 それは私の心のモヤモヤを代弁する、悩みに悩んだ 言葉でもあった。 私は電子世界を流され、一人のご主人様に拾われたメイドである。 ・・最も、メイドといってもご主人様とは世界が違うので、会話や行動を通して 喜んでもらえるように努力を・・しているのだろうか。 どちらかと言うと、自分は自分の生きたいように、というスタンスを 取ってしまう事が多かった。・・今回拾われたご主人様に対しても、 恐らくはそんな行動をしている事が多いのだろう。 そんな自覚も感じない程度に、自分は自由に生きてきている気がした。 「・・・何で私、お昼にこんな事考えてるのかな・・」 ご主人様も不在で、相方である猫のメルも近所の猫会議に出席中。 何をするわけでもなく、何を強制されているわけでもないお昼の時間。 自分のやりたい事に集中できる、と言われれば聞こえは良いのだが、 やりたい事がそう簡単に日常生活から見つかるかと言われれば そうでもないし、何よりご飯を食べた後のお昼は眠くなる。 ・・結局、この時間は昼寝に費やしているような時間だったのに。 「今なら、誰もいないんだよね・・」 私の住んでいる地域は電子世界の狭間に当たるのだが、ある程度の近隣の区域までは 固定されて流れており、それなりに近所については把握できるようになっている。 またこの電子世界の狭間はまず近づいたり訪れる人がいない為、人が少なく あまり多くの人が住んでいるような場所でもなかった。 無論私も訳あってこのような場所に住んでいるのだが、その長閑な雰囲気は 私にとっては非常に過ごしやすい空間でもあった。 「・・・よし!」 ベランダに出て大きく息を吸い、私は一つの決意を固めた。 誰もいない、誰もやって来ないと分かるからこそ出来る行動。 それこそ、自分の家の周辺だけで行う屋外露出であった。 「メルだってお隣さんに行っちゃってるし、これだったら 問題なさそうだよね・・・。 ・・ちょ、ちょっと緊張するけども・・」 私は普段からロングスカートのメイド服を着ているが故に、 あまり露出の高い服装を好まなかった。 また全裸になる機会なんてお風呂を除いてない為、普段から肌の露出というものに 慣れていなかった。・・しかし最近、それを日常生活の内のスリルとして 感じるようになってから、私はこのドキドキ感が忘れられないでいた。 人が少ないからこそ、「見つかってしまったらどうしよう」という感覚がより強くなる、 そんな気がしていた。 「・・・や、やっぱり緊張するなぁ・・」 私の家は二階建てで少し横に広めの屋敷になっている。これはかつてのご主人様が 残してくれた一つの遺産でもあった。 普段は一階のリビングや二階の自分の部屋を中心に家の中を下着なしのコート一枚で 回る事が多かったのだが、どうしても外界に対する抵抗感もあってか 屋外への露出に対しては消極的であった。 しかしこれら一連の行動を繰り返している内に、私は不満を感じ始めていた。 「刺激のマンネリ化」である。露出の形態自体が悪いわけではないと思うのだが、 その一つ一つの、肌に感じられるような刺激が家の中ではあまり感じない。 普段から生活している空間で、普段と違った露出の興奮は悪いものではない。 しかし逆に、それ自体に「それを超える刺激」がなかったのであろう。 「・・ちょっとだけ、行ってみようか?」 裸の身体にコートを羽織り、家のドアで立ち止まる。 たかが一歩、されど一歩。暖かい午後のひと時なのに寒気を感じてしまう。 ・・やるなら今しかない、今なら行ける。 自分を後押ししながら、私はキィ・・とゆっくり玄関のドアを開けた。 「・・・うわぁ・・・」 見慣れていたはずの景色が、何故か新鮮な感じに見える。 揺れる草木や、太陽の光が、その一つ一つが刺激の塊となって 私の身体を興奮させている。そんな感覚になった。 「・・す、凄い・・っ・・」 性的興奮を刺激するような器具は何もつけていない。 つまり他に感じるような要素等が無かったはずなのに、私は不思議と 性的な高揚感を感じていた。 風が私を暖かく包み込み、撫でるように私を刺激する。 今までにない、自分の裸体を屋外に晒す、爽快感と解放感。 様々な感覚が私を一度に刺激した。 「・・・んん・・っ・・・」 震える身体。寒気ではなく、きっとこれは幸福感なのだろうと 感じられたのはそれから暫く経ってからの事であった。 まるでふわりと空を飛んでいるような感覚・・非日常への、禁断の扉を そっと開けてしまったような、そんな雰囲気だった。 「・・・あぅ・・・も、もぅ・・・っ!」 突如として下半身に走る刺激。私はその時、自分が絶頂したと自覚した。 自分の家の前で、裸になっていて立っているだけなのに。 この刺激を、出来ることならずっと味わっていたい・・そう感じられるような、 確かに幸せな絶頂だったと、実感することができた。 「このままこの刺激を受け続ける事ができたら、もっと強い刺激を 受ける事が出来るなら・・・」と考えたりもしたが、今の私には それを続けるだけの気力と体力は残っていなかった。 私はそっと、幸せに満ちた笑みを浮かべながら部屋へと戻っていった。 「・・今日は随分とニコニコしてるな。」 「そう?別にいつもと変わらないよー。」 「ニヤニヤしてない辺りはお前らしいなと思うんだけどな? ・・何か良い事でもあったのか?」 「・・うーん、ちょっとくらいならあったかな?」 もう少し、あの刺激に慣れるようになったら。 もっと強い刺激を求めて、もう少し冒険してみてもいいかもしれない。 そんな事を考えた、ある日の夜のひと時だった。 |