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「家の外でこっそり露出はもう飽きたの。」 溜め息混じりにつぶやいたマキの一言は、普段の彼女には見られないような 不満ぎみな一言であった。 「・・普段の時点でおかしいとは思わなかったのか?」 「いいえアリサ、それを分かっていながらあえて突き進むのが 私の方針なのよ?」 「・・・はぁ・・で、今度は何をするつもりなんだ?」 昔から通じ合っていると思っている私とマキの仲でも、私には 理解できない彼女なりの行動の動機は、まだまだ多い。 それはきっと、私が彼女の心の内を深く理解していないからこそ ではないかと考えていた。 ・・しかし、彼女の一言を聞いた時、私が彼女の「全て」を 理解できていないという努力不足によるものではないと感じた。 「勿論、行くに決まっているじゃない!」 「・・・何処に?」 「大自然によ!」 彼女の突拍子もない行動そのものが、 常識人・・と感じている私には理解不能であったという事を。 「・・着いたわ!」 「・・郊外の山奥の村か・・ 確かにあまり遠くはない場所だが、マキは何故私まで 連れて来ようとしたんだ?」 「決まっているじゃない、アリサに私の痴態を撮ってもらうのよ!」 最早溜め息を出すしか、心の逃げ場がないように思えた。 私からすれば、露出をする事も恥ずかしいが、自分の愛人とはいえ そんな彼女のあられもない姿を撮るのは心地良いものではなかった。 「・・正直、私はあまり良い事だとは思えないな」 「むむー、アリサはこういう場所だと興奮しないってこと?」 「そっちじゃない。・・そもそも、 どうしてマキは露出が楽しいと思えるんだ? そして何故私にそれを写真にして残そうと思ったんだ? ・・私には理解不能だ。」 彼女のそんな姿を何故形にして残す必要があるのか。 自分にだけ見せるような状態ではいけないのか。 何より、それを携帯等に保存した場合、他人に見せてしまえるような状態が 日常生活の内で成立してしまっているという事自体が、 私にとっては「自分が知っている彼女の痴態を他人に晒してしまう」という 良く思えるような状態ではなかったのだ。 「・・うーん、そうねぇ、アリサからすれば私を独占したいという 気持ちがあるのは理解できるわ。 でもねアリサ、普段の生活から逸脱した場所であるからこそ 起こり得るスリルは、また違った興奮の源になるのよ?」 それが私には理解できない、そう言おうとした瞬間だった。 「・・だからこそ、それを理解してもらう為に 私はアリサをこうして呼んできたの。 決して他の人に見せたいなんて思ってる訳じゃないから、安心して?」 その一言が私の安堵に繋がったかは、今となっては覚えていない。 しかしその時私は確かに、自然と頷いてしまっていた。 彼女は車で到着した広まった場所から、より狭い場所へと向かっていくように 少しずつ山の奥へ歩き始めた。 静かにするモーターの音が、私の不安と、警戒心に繋がっているような、 そんな気がしていた。 「もう少し奥の方まで行かないと駄目かしらねぇ」 「なぁマキ、お前もしかして・・・・」 「ご名答♪ 因みに着く前からずっと『弱』でつけっぱなしだったわよ?」 じゃあ今はどんな状態なのだろうかと、少し想像して興奮してしまった 自分が恥ずかしい。そんな私を横目に、彼女は少しずつ、山道の奥の 開けた場所へと、ゆっくりと、しかし確実に歩みを進めていた。 「・・や、やっぱり、なんだかんだで・・きついわね・・っ」 「歩いてる時もつけているままのお前の心情が理解できないな」 「人から直接見られている視線への興奮は、やっぱり必要だと思うのよ。 勿論、今の場合はアリサに対して・・ね♪」 少し赤くなった頬と、興奮して蕩けた顔でそっとつぶやいてくる彼女の声は 普段、私と部屋で「している」時の彼女の顔とはまた違った印象だった。 ・・これが彼女の言う「露出の魅力」なのだろうか、と少しでも 真面目に考えてしまっている自分が恥ずかしくもあった。 「・・ふふっ、今私を見てちょっと興奮してたわね?」 「!? ・・そ、そんな事は・・・な、ない・・・っ」 「そういうアリサの分かりやすいところ、私は大好きよ。 こうして正直に動揺しちゃってるところも、ね。」 見透かされている。・・そう感じた時、頭がかっと熱湯が沸騰したかのような 熱さになった感覚になった。 それはきっと、彼女の内側を想像してしまったのと、自分の心が身体に対して 正直になってきたからではないかと感じられた。 彼女自身も興奮してきたのであろう。口数も減り、小さく喘ぎ声も出始め、 先の会話が終わって数分経ち、私達は大木に囲まれた広々とした スペースに到着した。 「・・・・ここなら、いいかもしれないわ・・・っ・・」 「・・ここなら?」 「ねぇアリサ、貴方とは違った視線で、 エッチになってきちゃう私の姿、ちゃんと撮ってくれない?」 彼女は興奮していながらも、真剣な眼差しで私にそう言ってきた。 私と違った視線?他人ではない視線・・?と、頭の中に疑問が 回っていながらも、私は半ば彼女に押される形で頷いてしまった。 彼女から渡されたデジタルカメラを、少し震える手で持ち、 それまでの長袖の、彼女の身体に対しては大柄なコートが 彼女自身によって脱がされて行くのを待つ事にした。 「・・・・んっ」 細々としつつも、甘い彼女の喘ぎ声と共にコートが脱がされ、 下半身を自身の蜜によって彩られた綺麗な裸体が露わとなる。 「・・そう、・・この感覚を求めていたの・・・ 誰に見られるかじゃない、風や外の空間に 全身を刺激されちゃうこの感じが・・・・!」 高揚していく声と共に、彼女の身体も小刻みに震え出す。 彼女の愛蜜により下半身がより淫猥に彩られていくその光景を、 私は一瞬を捉える写真によって撮影していた。 動画の連続した動きではなく、その一つ一つの瞬間こそが彼女の 興奮を表す事が出来るように工夫する。 気がつけば私は、彼女をいかにして綺麗に、しかし卑猥に撮影する事が 出来るか、という自身の課題に没頭していた。 「・・こんな場所なのに裸になっちゃってる、これこそが 私の求めていた今までとは違った感覚・・・・っ、 ・・あぁ、でもアリサの視線も・・カメラにも・・・!」 今までマキは、私の幾度にわたる説得にも関わらず 下着を着ないでコート一枚で外出する、所謂「プチ露出」を多々行っていた。 彼女には何度も「何故私がいながら」と叱責していたが、彼女は 「それでもやめられなくなっちゃうの」と何度も言っていた。 彼女はこういった刺激を求めていたのかと、本来やってはいけない事だと 分かっていながら、それをこうした方法で超える事で従来と違った興奮を 得ているのだなと、私は今までと違った彼女の姿を凝視することで 実感し、共有しているような感覚を感じていた。 「・・も、もう駄目っ・・・!」 しかしそんな時間に突如止めを刺すように、彼女の身体が大きく震えた。 静かな空間の中だからこそ響くぴちゃぴちゃという液体の音と、 ガクガクと震え出す彼女の脚。彼女は確かに、この場で絶頂を迎えた。 普段の私との愛の営みでは見られない、彼女の別の顔がそこにはあった。 「・・んふふ、・・イッちゃった・・」 絶頂に蕩け、どこか夢見心地な笑みを私に見せ、彼女は私に呟いた。 今までと違う彼女の姿を、今まで理解できなかった彼女の一部を、 同じ時間を共有することで、理解する事が出来た。 身体に感じた興奮と同時に、私は冷静にそんな事を考えていた。 「・・なぁ、マキ」 「んー?どうしたのー?」 「こんな事言うのも何だが、・・少しだけマキが 考えている事が分かった気がする」 「難しい言い方しちゃってー。 私で興奮したって素直に言っちゃっていいのよ?」 「・・お前にそう言うと負けた気がするんだ」 すると彼女は、少し冷静になったような顔で私の眼を見つめ、こう言った。 「・・でもねアリサ、こうして貴方を連れてきて 良かったなって私は思ってるのよ。 ・・私にこんな事をお願いできるのは、貴方しかいないんだから。 だからこそ私の理解者である貴方に、私の興奮を、全てを理解して欲しかった。」 彼女は私に、私が理解できない彼女の行動とその理由を、同じ時間の共有というものを 通して伝えようとした。 彼女は自身の興味と同時に、今まで私に伝えられなかった感覚を、 こうして伝えようとしてきた努力に、私は感動した。 今までと違った彼女の一面を、「私だけに見せる」と約束した事で安心させ、 私を山奥まで連れてきた理由も、そうした彼女の努力だったんだなと感じられた。 「・・だからアリサ、貴方も露出してみない?」 「どうしてそうなるんだ・・」 「えー、アリサはやろうと思わないの?」 「・・私にはあれをやる勇気はない」 それでも、彼女の全ては私には理解不能なんだなと感じた瞬間だった。 |